徳之島で創業100周年を超える最古の蔵元である亀澤酒造場の黒糖焼酎
奄美群島にある黒糖焼酎の蔵元を調べていると、本当に驚かされることばかりである。
まず、筆者が最も驚いたのは、黒糖焼酎蔵元の歴史の古さについてである。
18世紀の産業革命の頃は、会社の平均寿命は70年だと言われていた。
それが、2023年現在、世界の会社の平均寿命は7年だと言われている。
そんな中、日本には世界でも珍しいほどに、寿命の長い会社がたくさん軒を連ねているそうである。
海外からの訪問者にまず自慢していいことは、会社の平均寿命が長いということは、それだけ社会的な信用が大きいということである。
これをお読みの読者様の中で、2021年に世界自然遺産登録された徳之島のことを知っている人が、どのくらいいるのだろうか?
ましてや、そんな徳之島で、100年を超える焼酎の蔵元があるなんて、誰が想像できるであろうか?
亀澤酒造場は、徳之島の中心街である亀津にあり、亀津漁港からアクセスしやすい海岸に近い場所にある。
亀澤酒造場は、1965年に「奄美酒類」に組み入れられるまで、代表銘柄である黒糖焼酎「まる一」を製造していた。
「奄美酒類」を構成する蔵元は、中村酒造(なかむらしゅぞう)、高岡醸造(たかおかじょうぞう)、亀澤酒造場(かめざわしゅぞうじょう)、天川酒造(あまかわしゅぞう)の4つの蔵元になる。
現在、亀澤酒造場で製造している単独銘柄というのは存在しないが、「奄美酒類」では、上の4つの蔵元のブレンド酒で造られた黒糖焼酎が出荷されている。
亀澤酒造場の代表である亀澤秀人社長に、徳之島の最大の魅力を聞いてみたところ、年中を通して、徳之島の暑すぎず、寒すぎない自然は最高に住みやすいとのこと。
だから、亀澤社長にとっては、徳之島の自然は、住み心地は100点満点だということである。
徳之島の魅力がますます気になった人も多い中、何といっても、島酒である黒糖焼酎を楽しむべきであろう。
徳之島に行かなくても、黒糖焼酎なら、酒販店はインターネットで簡単に手に入る。
この記事では、亀澤酒造場の蔵元のご紹介と、黒糖焼酎、また、徳之島について、ご紹介していきたいと思う。
徳之島ってどんな島なの?
みなさんは、徳之島(とくのしま)をご存知だろうか?
ここでは、徳之島のことを以下に簡単に解説させていただこうかと思う。
ただ、徳之島についての詳しい内容については、別の記事でガッツリと紹介記事を作成しているので、ここでは、簡単な紹介だけにとどめておこうかと思う。
徳之島は、奄美大島の最南端にある与路島と沖永良部島との間にある奄美諸島の中では、奄美大島の次に大きく、人口の多い島である。
実は、徳之島と沖永良部島では、ここの島を境に、沖縄色と鹿児島色の境目となっている。
徳之島は、奄美諸島の中でも闘牛の文化が残っていることや、トライアスロンが盛んであったり、島としての魅力を語るには話題に事欠かない島である。
そして、徳之島では、何といっても壮大な自然があり、2021年7月26日には、世界自然遺産登録された、最も注目すべき島だと言える。
徳之島にも徳之島空港があり、最短で移動する方法ではあるが、最安値で行くには、那覇か奄美大島からフェリーを利用するのが最安値となっている。
ここでは、徳之島の中でも、亀澤酒造場周辺の観光スポットについて、いくつか簡単にご紹介していきたいと思う。
有限会社亀澤酒造場は、徳之島の一番の中心街である、徳之島町亀津にある、共同瓶詰会社 奄美酒類を構成する蔵元の一つである。
奄美酒類を構成する蔵元は、「中村酒造(なかむらしゅぞう)」「高岡醸造(たかおかじょうぞう)」「亀澤酒造場(かめざわしゅぞうじょう)」「天川酒造(あまかわしゅぞう)」の4つの蔵元で構成されている。
亀澤酒造場へのアクセスについては、徳之島空港から車で32分ほど、バスを使用しても、1時間10分ほどで、アクセスすることができる。
亀澤酒造場は常圧蒸留製法のみで黒糖焼酎を製造していて、蔵の見学は受け付けていないとのことである。
徳之島町立郷土資料館
徳之島町郷土資料館は、徳之島の歴史・文化・自然・伝統工芸などを、豊富な展示と貴重な資料で学べるスポットである。
どのようにして、アマミノクロウサギをはじめとする固有種が徳之島で暮らすようになったのか?
独特の文化や言語がどのようにしてこの土地に根付いたのか?
このような疑問について深堀りしたいときに、知ることのできる資料が展示もされている資料館である。
井之川岳
徳之島最大のパワースポットとも呼ばれる井之川岳は、徳之島で最も標高が高い山である。
鹿児島県内には、桜島や霧島山、屋久島の宮之浦岳や永田岳など、1000mを超える山々が多数存在している。
奄美諸島内に限ると、井之川岳は奄美大島の湯湾岳に次いで、2番目に高い山である。
ここでは、特別天然記念物のアマミノクロウサギを始めとした、奄美群島ならではの貴重な動植物が生息している。
第46代横綱朝潮太郎記念像
幕内優勝5回、殊勲賞4回の記録を誇る徳之島出身の横綱・朝潮太郎の記念像である。
豪快な押し相撲で知られ、引退後は、高砂部屋を継承し多数の力士を育てたという。
現在も徳之島は相撲が盛んなところとして知られ、南海のハブと恐れられた旭道山も輩出している。
喜念浜(きねんはま)
徳之島の南東に位置する喜念浜は、目の前に太平洋と青い空が広がり、幅100メートルのサンゴ礁の白浜が約1キロメートルにわたって広がっている。
美しいビーチと並行してアダンの群生やモクマオウの防風・防砂林も見られ、島の人や観光客の心を癒してくれる。
ここでは、シャワー室やトイレ、駐車場も整っているので、安心して観光を楽しむことができる。
のんびりと時の流れをゆったりと感じたい方には、特におすすめしたいビーチとのことである。
亀澤酒造場の歴史について
ここで、亀澤酒造場のこれまでの生い立ちについて、述べて行こうと思う。
※ 本内容については、かなりの内容を、「あまみの甘み あまみの香り」鯨本あつこ・石原みどり 著から引用しています。
亀澤酒造場の創業は、大正10(1921)年に創業し、徳之島で最も老舗の蔵元となっている。
亀澤酒造場の初代の代表である亀澤道喜(かめざわ・どうき)氏が沖縄から杜氏(とうじ)を招き、旧亀津村・亀津(かめつ)に創業した。
道喜氏は、旧亀津尊重や旧亀津町を歴任し、徳之島町の名誉町民第1号となった地元の名士だったとのことである。
亀澤酒造場の創業時の銘柄「まる一」は、黒麹を使った甕仕込みの焼酎で、量り売りやお手頃な二号瓶もあり、晩酌や冠婚葬祭などの場に欠かせない地酒として、地元亀津で愛飲されていたそうである。
亀澤酒造場の創業時の蔵は、亀津の海岸付近に建つ藁葺き(わらぶき)屋根の木造小屋だったとのことである。
薪で火を焚いて米蒸しや蒸留していると、吹き込み風で火の粉が飛んでボヤ騒ぎを起こすことも度々だったようである。
木造家屋が密集する町なかでは心配が絶えなかったため、昭和の初め頃に、良質な地下水に恵まれた現在地へ移転することになった。
その後、奄美酒類での共同瓶詰体制となり、今に至る。
亀澤酒造場の現代表を務めるのは、同蔵元で三代目となる亀澤秀人(かめざわ・ひでと)さんが代表を務める。
亀澤酒造場の焼酎造りの特徴について
ここからは、2023年現在における、亀澤酒造場における、焼酎造りの特徴について、述べていこうと思う。
亀澤酒造場は天井が高く、体育館のような蔵には、いつも音楽が流れている。
これは秀人さんの趣味で、音楽があるとリラックスして作業がはかどるのだという。
はじめはラジオの沖縄放送を流していたそうなのであるが、ラジオが壊れてからは、有線放送を蔵に入れたいというほど、音楽は欠かせないのだという。
蔵元内でBGMの流れるなか、蔵で働く造り手さんたちも和気あいあいとした雰囲気で焼酎を製造しているとのことである。
亀澤さんが特にお気に入りの音楽はクラシック音楽ということで、イノウエが好きなのもクラシック音楽なので、とても嬉しいご趣味をお持ちだと思った。
焼酎造りに使用する黒糖と米の比は、約1.8対1。
原料の米は、タイ米を使用し、麹(こうじ)は銘柄により黒麹と白麹を使い分けている。
原料の黒糖は、沖縄産を主に使用しているとのこと。
仕込み水は蔵の地下からくみ上げる硬水で、豊富に含まれるミネラル分を栄養に、もろみがよく発酵するとのこと。
仕込みは、一次仕込みはFRPタンクに米麹を仕込み、二次仕込みは、背丈ほどもある大きなFRPタンクに一次もろみを移し、黒糖を2回に分けて加えていく。
中村酒造や天川酒造も採用するFRP製の仕込みタンクは、島内では亀澤酒造所が初めて導入したとのことである。
FRP製の仕込みタンクの特徴は、焼酎蔵でよく使われるホーロー製やステンレス製のタンクに比べて腐食しにくく、麹を仕込む際の急な温度低下を防ぎ、もろみの保湿性に優れているとのこと。
亀澤酒造で行われる焼酎の蒸留は、常圧蒸留のみ。
原酒は23キロリットル入る巨大なステンレス製タンクに1年以上貯蔵される。
原酒を寝かせながら、徐々に浮いてくる油分を丁寧にとり除き、雑味のない原酒に仕上っていく。
秀人さんの話によると、不純物を取り除かないで焼酎を冷却すると、不純物が貯蔵中に溶け込んでしまうということ。
だから、焼酎を貯蔵する前に、丁寧に不純物を取り除くのだそうで、そのような作業を手作業で行っているとのこと。
インタビューに応じていただいた方をご紹介
今回、イノウエの取材でインタビューに応じていただいた人について、記載していこうと思う。
代表取締役社長 亀澤 秀人(かめざわ・ひでひと)氏
今回、亀澤酒造場の代表である、亀澤秀人社長にインタビューをすることができた。
亀澤さんは、とても落ち着いた雰囲気のある気さくなお人柄でとても親しみやすい印象のある人だと思った。
亀澤さんも、高校を卒業した後で、東京で切らしたこともあったというが、蔵元の跡継ぎがあったので、25歳のときに、徳之島に戻ってこられたということである。
徳之島での生活が長い亀澤さんに徳之島のオススメポイントを聞いてみたところ、住み心地が抜群に良いとのことである。
徳之島の気候は、夏は30度を上回ることがほとんどなく、冬は10度を下回ることがない。
夏が暑いといっても、最高気温で30度を少し上回る程度で、冬が寒いといっても夜中の最低気温が13度程度ととても過ごしやすい。
亀澤さんによると、この徳之島の気温の過ごしやすさは、100点満点だとおっしゃられた。
亀澤さんにオススメの黒糖焼酎の飲み方を聞いてみると、お湯割りが最高とのことである。
年中過ごしやすい徳之島では、夏が暑いからといってロック、冬が寒いからといって、熱いお湯割りを飲む必要が無いのだという。
イノウエが焼酎のお湯割りを飲むときは、寒い冬に、あえて熱いお湯割りで体を温めながら、冷めてきたお湯割りの味を楽しむといった飲み方をする。
亀澤さんが飲む黒糖焼酎のお湯割りは、80度くらいのお湯に、7分目までお湯を入れて、残りの3分目に黒糖焼酎を注ぐのだとか。
こうして一定の割合で黒糖焼酎のお湯割りを作ることで、いつも自分好みの味をひたすら飲むといった楽しみ方が最高だそうである。
つまり、亀澤さんによると、黒糖焼酎の楽しみ方のポイントは、自分好みの味にこだわるといったことだそうだ。
亀澤さんの黒糖焼酎の飲み方に比べて、飲む濃度や温度、混ぜ物にかなりムラがあるイノウエの飲み方は、少々、邪道な飲み方なのかもしれない。
住民の憩いの場である闘牛場「亀津闘牛場」をご紹介
徳之島といえば、闘牛場の島である。
徳之島では、比較的大きな闘牛場だけでも、7つの闘牛場があるとされ、闘牛の訓練場となると、もっとたくさんの場所で闘牛の訓練が行われている。
徳之島では、島の行事のたびに、各地で闘牛が行われるほど、島の行事と闘牛との関係はとても深いものがあるという。
そんな徳之島の闘牛で特に盛り上がるのが、島一番の闘牛を決める、全島大会である。
全島大会は、GW、10月、1月と、祭りのシーズンに行われ、全島大会には約3000人の闘牛ファンが押し寄せて闘牛を観戦する。
ただ、全島大会が開催される場所については、特定された場所というのが無く、持ち回りで話し合いなどで、その都度決められるのだという。
そんな徳之島の闘牛場で、亀澤酒造場から比較的アクセスしやすい闘牛場の一つである、「亀津闘牛場」について、簡単にご紹介していきたいと思う。
「亀津闘牛場」の基本情報
アクセス:徳之島空港より車で約40分、亀徳新港より徒歩10分
亀津闘牛場では全島大会は行われないが、徳之島の中心町である亀津からのアクセスが良い場所なので、比較的行きやすい場所ではないだろうか?
屋根付きのドームではないが、青空の下で闘牛を観戦するのもなかなかのもの。
奄美酒類の具体的な製品をご紹介
ここでは、奄美酒類が製造する、代表的な黒糖焼酎の銘柄のうち、いつくかの銘柄について、紹介していこうと思う。
「奄美(あまみ)」
度数:30度
蒸留方式:常圧蒸留
黒糖焼酎「奄美」はこれまでにご紹介してきたとおり、白麹仕込み、常圧蒸留で製造された4つの蔵元の原酒のブレンド酒である。
もともとブレンド酒というのは、味わいをまろやかにするためにするものであるが、各蔵元の原酒の味わいの主張が激しいのか、複雑な味わいのする面白いお酒となっている。
このブレンド酒の味わいというのが、重厚な味わいとなって表現されているので、ブレンド酒ならではの味わいが楽しめるのである。
この、複雑とも重厚とも言える「奄美」の味わいが何とも面白い味わいで、少しパンチの効いた黒糖焼酎が楽しめるといった印象がある。
特別に甘いということではないのに不思議なパンチ力。
この、重厚な味わいが、「奄美」が美味しいと感じる所以である。
「奄美フロスティ」
度数:25度
蒸留方式:常圧蒸留
このお酒の特徴は、代表銘柄である「奄美」に比べて、控え目な甘さでとても飲みやすい味わいといった特徴がある。
甘さが控え目という点では、お湯割りで飲むのが美味しくいただける方法だと思う。
もちろん、甘さが控え目なロックが好きな人はロックで飲んでも美味しくいただける。
このお酒の造りの特徴として、熟成期間を少し短くして出荷しているといったことがある。
筆者も、黒糖焼酎だからといって、甘すぎる黒糖を飲み続けていると、黒糖の甘さで口の中が甘々の状態になり、甘さを止めるか、辛さが無性に欲しくなるときがある。
このお酒であれば、ほどよい甘さを延々と楽しめるという人もいるのではないかと思う。
「奄美瑠璃色の空」
度数:30度
蒸留方式:常圧蒸留
「奄美瑠璃色の空」は、黒麹仕込みの焼酎で、3~4年熟成させたふくよかな味わいが特徴である。
黒糖焼酎に限らず、焼酎は熟成期間が長ければ長いほど、味わい深く、まろやかな口当たりになる。
このお酒は、黒麹仕込みなので、白麹仕込みのお酒に比べると、黒糖焼酎の場合、黒糖の甘さが最初に感じられ、飲んだ後から喉の奥で、辛さが襲ってくるような味わいになる。
黒麹仕込みの黒糖焼酎の方が、どちらかというと、ロックに向いている。
もし、ロックで黒糖焼酎を味わいたいと思った人は、このお酒を味わうとよいであろう。
徳之島で最古の蔵元は音楽好きで島をこよなく愛する焼酎造りの名人
ここまで、亀澤酒造場について、記載させていただいた。
何といっても、亀澤酒造場は徳之島で最古の蔵元なので、奄美酒類に統合される前から、この蔵元のお酒が、地元の人に愛飲されてきたのである。
亀澤さんは音楽を愛しているということであるが、徳之島の人に限らず、奄美諸島の人は音楽とお酒を愛する人が多いという特徴がある。
音楽とお酒が好きだという理由だけで、イノウエにとっては、徳之島の人を好きになる十分な理由である。
亀澤さんの話によると、徳之島は暑すぎず、寒すぎずで、年中とても過ごしやすく自然という意味では100点満点とのことである。
そして、黒糖焼酎を製造している蔵元で、お湯割りを愛飲しているという話はよく聞く話ではあるが、亀澤さんも黒糖焼酎のお湯割りの愛飲家の一人である。
イノウエはお湯割りを飲むときは、寒い冬に、体をポカポカと温めたくて、熱いお湯割りを楽しむことが多い。
亀澤さんの話によると、お湯割りの良いところは、自分の好みの味を最適に再現できる最も良い方法だということである。
なるほど、自分好みの狙った味わいをいつも楽しみたい。
これはまさに、究極の贅沢ではないだろうか?
イノウエは、甘さ控え目なお湯割りを楽しみたいと思い、「奄美フロスティ」を楽しんでいた。
イノウエは思った。
「やはり甘さ控え目な「奄美フロスティ」のお湯割りは、何杯飲んでも飽きない。」
今回の記事は以上になります。
ここまで読み進めていただき、ありがとうございました。