西平酒造(にしひらしゅぞう)について
西平酒造の創業は、昭和2(1927)年、沖縄出身の西平守俊(にしひら・もりとし)氏が喜界島(きかいじま)で創業し、妻のトミ氏が杜氏(とうじ)となり、泡盛の酒造場として事業をはじめました。
太平洋戦争のさなか空襲で蔵が焼け、終戦の翌年に奄美大島の現在地に移転し、今に至ります。
敗戦後、奄美群島がアメリカ軍政下におかれ、本土との物資流通が途絶えたなか、昭和27(1952)年に「巴麦酒株式会社」を設立し、島民が求めるビールやサイダー、乳酸飲料などの嗜好品製造も一時手がけました。
同社の「トモエビール」は奄美群島の日本復帰後、数年で姿を消したため、幻の地ビールといわれます。
仕込み水には、蔵の裏山から引いた軟水の地下水を使用しています。
麹(こうじ)は国産の破砕米に白麹造り。
黒糖は沖縄産を主に、不足分をボリビア産やタイ産でまかなっています。
造りの特徴は、甕(かめ)仕込みと半麹(はんこうじ)。
麹と水、酵母(こうぼ)を一次仕込みした甕に、二次仕込みで「半麹」(一晩だけ寝かせた熟成時間が半分の麹)を加えます。
手間のかかる方法ですが、ゆっくりと麹を糖化させることで米の旨味が引き出され、ふくよかな香りと味わいを生みだしてくれます。
三次仕込みでは、もろみをホーロータンクに移し、蒸気で溶かした黒糖を加えます。
発酵中のもろみに適度に混ぜると、熟成して焼酎に甘みが出てくるそうです。
蒸留は、原料の香りと味わいを引き出す常圧蒸留。
蒸留した原酒は、最低1年以上かけて貯蔵されます。
「珊瑚(さんご)」はタンクで一年以上貯蔵。
「加那(かな)」は樫樽(かしだる)で一年貯蔵し、更にタンクで一年以上熟成させています。
「時間がかかっても酒質を守るため、貯蔵期間だけは譲れない部分」と造り手は力を込めます。
大型のホーロータンクや80個の樫樽を合わせた蔵の総貯蔵能力は、約2750キロリットルにもなります。
過度な原酒のろ過をせず、タンクで貯蔵しながら自然に浮いてくる油脂分を何度も丁寧に取り除き、原酒に溶け込んだ油脂分を上手に残しながら長期貯蔵することで、芳醇な香りと旨味がもたらせます。
雑味のない、どっしりとした味わいは、丹念な仕事の賜物です。
西平酒造株式会社 鹿児島県奄美市名瀬小俣町
取り扱い銘柄 加那、珊瑚 など