奄美のみで生産が許された黒糖焼酎は黒糖の甘みとドライな飲み口が特徴
まず初めに、黒糖焼酎はこのブログのテーマでもあります。
黒糖焼酎は、単に黒糖を使った焼酎ということではなく、麹を使うことで、初めて焼酎と認められた焼酎です。
これは、このお酒の生産地である奄美群島という地域が、飲酒習慣があったことや、第二次世界大戦という背景から、黒糖焼酎という独特の焼酎が生まれました。
戦争という、何とも皮肉な負の遺産とも言える歴史ですが、この地域のみで生産が許された、黒糖焼酎は、この地域の命に関わる歴史があったからこその、奇跡のお酒とも言えます。
この記事では、そんな奄美群島における「島酒」である黒糖焼酎の原料である黒糖について、解説していきます。
この記事を読み進めることで、以下の主な3つの内容について、知ることができます。
① 焼酎の種類の中で、黒糖焼酎が持つ魅力について、知ることができる。
② 黒糖焼酎が製造されるに至った、歴史について知ることができる。
③ 黒糖焼酎に使われている黒糖の産地及び奄美群島の各島の特性が焼酎に及ぼす特徴について、知ることができる。
それでは早速ですが、次の章より、黒糖焼酎について、解説していきます。
黒糖焼酎の魅力について深く知りたい
サトウキビを原料とした黒糖焼酎は奄美諸島の特産品です。
奄美の地元では、黒糖焼酎は「島酒」と呼ばれています。
黒糖焼酎は、黒糖の持つ独特の香りと甘味、そして、すっきりとしたドライな口当たりは、女性にも人気です。
黒糖焼酎は、飲んだ後のさわやかな香りも心地よく、食中酒にも食後酒にもおすすめです。
また、このお酒は、オンザロックや水割りだけでなく、ソーダ割り、カクテルなど、トロピカルにも楽しめます。
そして、黒糖焼酎は、郷土料理はもちろん、こってりとした肉料理にもぴったりです。
黒糖焼酎造りを唯一許可された奄美諸島
黒糖焼酎は、黒糖を発酵させて造られます。
実は法律的には、糖類から焼酎をつくることは許可されていないのです。
しかし、1953年に、奄美諸島が日本に返還されたときに、この地の飲酒習慣など、奄美諸島の歴史的背景が考慮され、麹を必ず使用することを条件とすることで、黒糖から造った蒸留酒を、黒糖焼酎として認められました。
そして、日本国内で唯一、奄美諸島だけが、黒糖焼酎の製造が認められたのです。
黒糖焼酎は現在、奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島で造られています。
第二次世界大戦が黒糖焼酎を生んだ?
黒糖の原料であるサトウキビは主に、沖縄、奄美諸島でつくられています。
沖縄から奄美諸島にサトウキビ栽培の技術が伝わったのは、17世紀末のことです。
当時、奄美諸島は、薩摩藩の統治下にあり、島民が黒糖を口にすることはありませんでした。
このとき、島内では、焼酎の原材料に使われるのは、芋や米などであって、黒糖が焼酎の原料に使われていることはありませんでした。
ところが、第二次世界大戦が勃発することにより、奄美諸島と日本本土が完全に切り離されてしまい、奄美諸島は米軍の占領下で監視されることになりました。
このことで、奄美諸島で製造されていた黒糖が余ってしまうことになったのです。
そして、その黒糖を使って、焼酎を造ることになったのが、黒糖焼酎の始まりでした。
米麹で差別化される黒糖焼酎とラム酒
黒糖焼酎は、造り方からいえば、南米や西インド諸島で造られるラム酒と同じスピリッツ類に属します。
しかし、一次仕込みに米麹を使うということを条件に、酒税法上で焼酎に分類されています。
このおかげで、黒糖焼酎はラム酒やスピリッツに比べ、酒税をかなり安く抑えることができています。
さらに、酒税法上のメリットだけではなく、黒糖焼酎の麹に米麹を使うことで、ラム酒とは一味違う、上質の甘味とコクと旨味を手に入れることができたのです。
このように、黒糖焼酎が焼酎として分類されることになった背景より、様々なメリットが加わって、奇跡的な恩恵を受けたお酒となったのです。
薩摩藩が江戸で販売した「サタ酒」とは?
江戸時代の古文書をひも解くと、薩摩藩が軍資金稼ぎに江戸で焼酎を売っていたという記述があります。
古文書にある「サタ酒」とは、砂糖酒がなまったもので、黒糖焼酎のことのようです。
薩摩藩の統治下にあった、奄美諸島の島民にとっては、砂糖は高根の花でした。
しかし、そのような中で、実は、奄美諸島において、砂糖を炊いた鍋の洗い汁で、密かに焼酎や黒糖酢を
島民が造っていたという話もあります。
黒糖焼酎とバッタの関係とは?
奄美でお酒といえば、黒糖焼酎のことを言います。
奄美方言では、お酒のことを「せえ」と呼んでいます。
これは、琉球(沖縄)から奄美に泡盛が持ち込まれたとき、琉球の人から泡盛を「せえ」と呼んだからだそうです。
ところが、琉球で「せえ」といえば、バッタを指すのです。
とうやら、泡盛の瓶に止まったバッタを指して、琉球の人が「せえ」と言ったのを、奄美の人が勘違いしたのが、奄美でお酒を「せえ」と呼ぶことになった始まりのようです。
長寿をもたらす黒糖焼酎を科学的に考慮すると
人にとって、ビタミン不足は、美容の他に、疲労やイライラを招きます。
実は、ビタミンB群を多く含む黒糖は、エネルギー代謝を促進し、ストレスに対する抵抗力を高めます。
さらに黒糖には、血や細胞、骨をつくるミネラルも、豊富に含まれます。
尚、黒糖焼酎は糖質がゼロのアルカリ性健康食品です。
このことが、黒糖焼酎が長寿酒だと言われる所以だといえます。
黒糖焼酎に使われている黒糖の産地及び奄美群島の各島の特性が焼酎に及ぼす特徴について解説
ここでは具体的に、黒糖焼酎に使われている黒糖の産地と、奄美群島の各島の特性が焼酎に及びす特徴について、解説していきます。
黒糖焼酎に使われている黒糖の産地について
黒糖焼酎に使われている黒糖の産地には、以下の産地のものがあります。
・奄美諸島産
・沖縄産
・フィリピン産
・タイ産
・ボリビア産
黒糖焼酎の原材料である黒糖は、奄美諸島だけでは需要が不足してしまうので、沖縄産や東南アジアのフィリピンやタイ産でまかなわれています。
黒糖焼酎の蔵元によっては、奄美大島酒造などは、全て、奄美大島産の黒糖だけで生産している蔵元もありますが、ほとんどの蔵元では、奄美大島産以外から、黒糖を仕入れています。
それでは、以下より、奄美諸島のそれぞれの島の特性が焼酎に及ぼす特徴について、述べていきます。
奄美大島
奄美大島はその名のとおり、大島とつくほどに、島自体がとても広い島です。
この島には、「じょうご川」の名水や、地下水などの豊富な水資源というのがあり、それらの水は黒糖焼酎の仕込み水や割り水に使用されています。
奄美大島でもサトウキビは生産されており、奄美大島産の黒糖は、限定銘柄に使用されるなど、上質の黒糖が製造されています。
喜界島
喜界島は奄美群島の中でも最北端にある小さな島です。
喜界島でもサトウキビが生産されており、この土地ではサトウキビが育ちやすい環境があります。
喜界島はサンゴ礁が隆起してできた島なので、島からとれる水は、ミネラル豊富な硬水です。
この硬水を仕込み水に使うことにより、麹がそく育ち、ミネラル豊富な焼酎ができあがるのです。
喜界島の焼酎の割り水には、軟水化された水が使用されています。
徳之島
徳之島でもサトウキビを生産しています。
徳之島産の黒糖は、無農薬で混ぜ物を一切しない、純黒糖として販売されています。
徳之島の地下水にも名水と呼ばれる水があり、その水の美味しさはそのまま焼酎の美味しさに繋がっています。
徳之島は闘牛が盛んな島で、島人の気質もワイルドな雰囲気だったりしますが、ここで造られている黒糖焼酎は、個性が強いというよりも、スマートな焼酎が多いのが特徴です。
これは、徳之島の地下水の名水などによる水の美味しさも影響しているように思います。
沖永良部島
沖永良部島においてもサトウキビの生産が行われています。
沖永良部島は、土地が農作物に必要な土壌に恵まれた土地とも言えず、肥料などを土地に混ぜながら生産しているサトウキビ農家も多いです。
沖永良部島は地下に鍾乳洞が豊富にあるほど、石灰質な島であるため、ここで入手できる水は、バリバリの硬水です。
そのため、仕込み水には、ミネラルたっぷりの硬水が使用されるのですが、割り水に使用される水は、軟水化処理された水や、海洋深層水などを輸入するなどして、割り水に使用されています。
与論島
与論島でもサトウキビの生産は行われています。
与論島では昔から水には恵まれなかった島だったので、島では生活水が貴重な水でした。
現在では、地下水などを汲み上げたり、天水をろ過して生活水に使用したりしています。
同じように、焼酎を造る水などについては、昔から貴重な水を使用して、製造されてきました。
与論島での黒糖焼酎の蔵元は、有村酒造のただ一つだけとなっております。
それ故、この蔵元で製造されている「島有泉」は、この地では昔から島の人々に愛されてきた銘柄でした。
黒糖焼酎は麹を使って製造することで焼酎の仲間入りを果たす
今回の記事では、このブログのテーマでもあります、黒糖焼酎の黒糖について解説してきました。
黒糖焼酎は、単に黒糖を使った焼酎ということではなく、麹を使うことで、初めて焼酎と認められた焼酎です。
今回の記事では、以下の主な3つの内容について、解説してきました。
① 焼酎の種類の中で、黒糖焼酎が持つ魅力について、すっきりとしたドライな口当たりや、さわやかな香りなどの魅力について、解説させていただきました。
② 黒糖焼酎が製造されるに至った、歴史、第二次世界大戦がもたらした黒糖焼酎にいたった経緯などについて解説してきました。
③ 黒糖焼酎に使われている黒糖の産地及び奄美群島の各島の特性が焼酎に及ぼす特徴について、解説させていただきました。
黒糖焼酎は、奄美諸島では「島酒」と呼ばれ、米麹を原材料に使うことで、酒税法上で焼酎と認められました。
また、米麹を使うことで、上質な甘みやコク、旨味などの要素が加わり、現在の美味しい黒糖焼酎が生れるきっかけとなりました。
この記事は以上になります。
ここまで読み進めていただき、ありがとうございました。
以下、本記事など本格焼酎に関してのまとめ記事へのリンクとなります。↓